整骨院のM&A事例から学ぶ視点(2)「買収後にいかにして従業員にやる気になってもらうか」

今回もM&A・事業承継グループの中野より情報のご提供をさせていただきます。
前回は整骨院のM&Aの事例を交えながら4つのポイントについて触れました。
 
今回はM&Aを実行したその後、
買い手となった経営者がどうやって売り手企業の社員と向き合い、
更なる成長を遂げていったのかについて触れていきます。
 
余談ですが、M&Aを実行する際、
「売り手側の従業員にはいつ通達するのか?」
というご質問を多くいただくことがありますが、最終合意契約の締結後が一般的とされます。
 
その理由としては、契約前に通達した場合に
1.最終合意契約前に従業員の退職が多く発生し買い手がM&Aを拒むこと
2.最終合意契約前に買い手都合でM&Aが実行されず、従業員間で混乱が発生すること
などのリスクがあるためです。
 
今回の事例もM&Aの実行後に従業員への通達が行われ、新旧交代となりました。
 
M&Aの当事者ではない売り手会社の従業員にとって、
「会社が売られた」という事実は非常にインパクトが強く、不安がよぎります。
 
・急にクビにされたり、給与を下げられたらどうしよう
・買い手が今までよりも厳しい会社だったらどうしよう
・社長になるのはどんな人なんだろうか、上司はどんな人になるのだろうか
・(売り手の)社長が経営しないなら辞めたい
・どうして事前に言ってくれなかったんだろう
 
といったものが一般的で、
買い手の経営者および責任者として参入する方はこの不安をどうやって払しょくし、
かつ今までよりもさらに成長を目指してもらうかを考えて行動しなければなりません。
下手をすると大量の退職者が出るリスクがあります。
 
今回のご紹介する事例では、
買い手の社長自らが各整骨院の店舗を巡回し、
従業員とのコミュニケーションを図り、
結果的にはM&A前と比較すると1年後には売上高がほぼ倍になるほどの成長を遂げられました。
 
その社長がまず行ったことは、従業員全員の名前、家族構成、誕生日、趣味を覚え、
コミュニケーションを図っていきました。
「マズローの欲求段階説」に沿って、
まずは生理的・安全性の欲求の満足化に努められました。
その後に買い手の会社の経営理念の共有を行い、
次の段階の社会的欲求の満足化に進めようとしたそうです。
 
一見、非常に論理的かつ、丁寧なPMI(買収後の統合プロセス)に思えます。
しかしながらこの作戦は上手くはいきませんでした。
M&A実行から2か月後、
社長がある程度のコミュニケーションが取れている手ごたえを感じ始めた矢先、
予想に反して「辞めたい」と数名の従業員から申し出があったそうです。
 
なぜだろうか、社長は非常に悩んだそうです。
社長がその辞めたいと考えている従業員の心境を掘り下げていくと、
次の心理が根底にありました。
「自分は売られた会社の従業員で、買い手の会社の従業員より劣っているのではないか」
社長より買い手側の会社の経営理念や業務への取り組みを聞いているうちに、
劣等感が湧いてきてしまったそうです。
 
ここから社長はやり方を切り替えました。
社長が行ったことは、経営理念共有よりも、
まずは従業員のみんなに成功体験を持ってもらうことを行いました。
課題を与え、つまずいた時はヒントを出してあげて、
課題の解決に取り組んでもらうこととしたそうです。
 
この積み重ねによって、経営成績は好転、従業員にも自信がつき、
ようやく経営理念の共有ができる段階となりました。
 
このように、中小企業におけるM&Aの場合、いかに従業員一人一人に寄り添い
トライ&エラーを行っていくかによって、その後の経営成績が大きく変動します。
 
これらをふまえると
・自社の売却を検討される場合は、売却条件に従業員の待遇面の約束ごとを盛り込むこと
・企業の買収を検討される場合は、買収後に従業員全員との連携計画を作成しておくこと
が重要となります。
 
会社の売上を上げてくれるのは従業員の皆さんがいなければ成り立ちません。
今回の従業員の視点というものを、お役に立てていただけますと幸いです。
 

株式会社船井総合研究所

金融M&A支援部

M&A・事業承継グループ

チームリーダー

中野 宏俊(なかの ひろとし)

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