『異業種M&A』成功の法則

 M&Aコンサルティングの現場では、「M&Aで異業種参入したいが、良い案件があれば紹介して欲しい」といった相談が寄せられます。
具体的に業種や地域などを質問すると、「まだ決めていない」や「安い会社があれば」などのお答えも聞かれますが、コンサルタントでさえ一定の経験を積まないと多くの業種の知見を得ることは不可能ですので、現在の事業に多くの時間を費やしていることからすれば当然と言えるでしょう。また、多くの条件を設定しすぎると、条件と一致する相手に出会うことが難しくなり、M&Aを実現する可能性は低くなります。
ゼロから事業を立ち上げる時間とリスクを考えると、今後の増加が見込まれるM&Aを活用した異業種参入を検討したいところですが、M&Aで異業種参入に成功した会社には「法則」が存在します。M&Aで異業種参入に成功するためのポイントを探ります。
 
 
『遠くよりも近くの会社』から始める。
 
 異業種M&Aを検討するにあたり、土地勘のない地域にある会社を買収するよりも、土地勘のある地域の会社の検討から始める方が成功確率は高くなります。具体的には県内企業から始めるのが望ましいと言えます。理由として、管理上の理由が挙げられますが、それ以上に「相手先の情報を得やすい」ところがメリットです。
M&Aの買収では、DD(デユーディリジェンス)と呼ばれる買収監査を実施し、財務、法務、労務、事業、不動産などの精査をおこないます。また、トップ同士の面談やマネジメントインタビューを実施し様々なヒアリングをおこないます。これらのDD(買収精査)を1~2か月程度実施した後に最終契約となりますが、最後まで相手の「真の姿」を知ることはできません(そのため、表明保証と損害賠償を規定する側面もある)。
県内企業の場合、異業種の会社が対象でも、会社の評判やキーマンなどの情報を得ることができます。DD(買収監査)では帳票類や契約書などの資料確認が中心となりますので、会社の悪いの評判や特定のキーマンに依存した構造である場合などは注意が必要となります。なお、これらは、異業種に限らず同業M&Aでも同じことが言えますが、特に異業種M&Aの場合は「遠くより近くの会社」が相手先の情報を得やすいメリットがあります。
 
 
『資金面に問題がない会社』を選ぶ。
 
 当然のことと思われるかもしれませんが、資金面に問題がない会社を選択することが重要です。理由として、買収後の追加資金対応が挙げられますが、それ以上に「資金面に不安のある会社は何かしら無理をしている」懸念があります。例えば、無理なコストダウンでサービス低下を招いている、従業員の士気が低い、劣悪な職場環境、更には、簿外の未納の税金支払いがある場合など、損益上利益が出ていても正常な営業状態に戻すための追加投資や人材投入に追われる可能性がありますので注意が必要です。
他方で、本来あるべき正常な営業状態に戻れば売上が回復する可能性もあるため、バリューアップの可能性をDD(買収精査)時のインタビューなどで確認する必要があります。
 
 
『マネジメント能力の高い会社』は異業種M&Aの成功確率が高い。
 
現在の事業にも共通するところですが、マネジメント能力の高い会社は、異業種M&Aや新規事業立ち上げの成功確率が高い傾向にあります。
マネジメントの在り方については本稿で触れませんが、2つの異なる会社がM&Aで統合することから、「人材」、「業務」、「予算」などを上手に管理しながら、その先の「目標」や「ビジョン」を共有し落とし込む必要があります。また、社員が成長を実感することができる「学び」の場を与える必要があります。トップのリーダーシップだけで乗り越えることはいずれ難しくなりますので、トップの意向をくみ取りながら組織への橋渡しができる幹部人材の育成や権限委譲など、リーダーシップ型からマネジメント型への転換が必要となります。
マネジメント能力の高い会社は異業種参入でも成功する可能性が高い傾向にあります。マネジメント型への移行と磨き込みを、まずは現在の事業から始めることを意識してみてはいかがでしょうか。
 
 
以上、「異業種M&A成功の法則」として、いくつかの条件をまとめてみました。M&Aを活用することで新規事業参入を実現できる可能性が一気に広がりますので、ご参考になれば幸いです。
 
 

株式会社船井総合研究所

M&A・事業承継グループ

グループマネージャー

エグゼクティブ経営コンサルタント

平野 孝

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