なぜ地方市場での上場を選んだのか?地方上場という選択肢を考える

前回は、「IPO市場における主幹事証券や監査法人の状況」と題しコラムをお送りしました。今回は、「2019年地方市場での上場企業の特徴とまとめ」というテーマで、地方市場の新規上場企業にスポットをあてて見ていきます。
地方市場の特徴については、コラム「東京だけじゃない!地方証券取引所の特徴と近年の上場実績」をご覧ください。
 
■2019年地方市場の新規上場企業数
 
2019年は新規上場が86社あり、そのうち地方市場への新規上場(単独上場)はアンビシャス、セントレックス、福岡証券取引所、Q-Boardに1社ずつの計4社でした。マザーズ上場が例年7割以上(2019年は86社中64社がマザーズ上場)を占める一方で、地方市場の新規上場は年間1社あるかないかと言われており、そのような状況下で全ての地方市場での上場(しかも単独)は、直近3年間では実現しなかった珍しいケースです。
 
下記の表は、地方市場で新規上場した4社の概要です。

※売上高、経常利益は直前期(N-1)の業績を参照
(各証券取引所のHPをもとに弊社集計)
 
■地方市場で新規上場した4社の特徴とは
 
①地元エリアで事業展開・拡大
上場した4社全てが地元エリアで事業展開・拡大をしている点が共通する一つの大きな特徴です。
【事業展開するエリア】
・日本グランデ…札幌市を中心
・名南M&A…東海地方を中心
・大英産業…九州地方・山口県を中心
・ピー・ビーシステムズ…福岡県を中心
 
上記の日本グランデ、大英産業は不動産業という点から地元での事業展開が想像つきやすいです。名南M&Aは、同社HPにも記載の通り、東海エリアで地域密着を差別化として事業拡大を進めてきた背景があります。
ピー・ビーシステムズは、企業の基幹システムをクラウド化する「セキュアクラウドシステム事業」を主力事業としており、同事業は不動産業と比較すると全国展開しやすい特徴を持っていますが、上場後も福岡を中心として全国展開する旨を同社社長インタビューで公言しています。
 
②マザーズ、ジャスダックより形式基準が低く上場しやすい可能性も
地方市場の特徴の一つが東証よりも上場における形式基準が低いことが挙げられます。(詳細はコラム「東京だけじゃない!地方証券取引所の特徴と近年の上場実績」をご覧ください。)
売上高で見れば、名南M&Aは2019年上場企業のなかで4番目に低い売上高で上場してます。時価総額(初値)の観点では、日本グランデが2019年上場企業のなかで最も少ない時価総額で上場しています。
 
■地方市場での上場メリットと選択肢
 
東京証券取引所ではなかなか得難い地方市場ならではの上場メリットがあります。
それは、
 
・地元への貢献
・地元での認知度、ブランドの向上 です。
 
元々、地方市場は地方経済の活性化を目的に作られた市場であり、上場に向けて、また上場後も地元から大きなバックアップを得ることができます。
東証と地方市場を同時上場する企業においても、上記のメリットを狙いとするケースが多いです。
 
ちなみに札幌証券取引所の上場セレモニーでは、札幌駅から大通駅を結ぶ地下通路のデジタルサイネージを自社で埋め尽くしてくれます。
最近は、資金調達以上に採用力を高める観点で上場する企業が増えてきており地元採用に力を入れたいというニーズも満たせる可能性があります。
 
地元経済へもっと貢献したい、地元での知名度を向上させることが事業の拡大、発展に大きく役立つと考えられる場合は、ぜひ地方市場への上場も選択肢に入れていただくことをお勧めします。
 
執筆者:株式会社船井総合研究所 
金融・M&A支援部 隅屋 彰則
 
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