~デューデリから未来へ向けて~「中小企業における既存事業投資基準について」Vol.83

前回の新規事業における投資基準やその時の注意点を記載した。今回は、それに引き続き、中小企業における“既存事業”における投資基準やその時のポイントについて述べてみたい。特に、新規と既存での違いについて、着目していただきたい。

 

既存事業の投資判断は、新規事業に比べて、比較的見えやすいものである。逆にその見えやすさが投資判断の甘さにつながることを、トップは認識する必要がある。この“投資判断の甘さ”について、もう少し具体的に示そう。

 

投資にはタイミングが重要であることは、ご承知の通り。特に物件などとの関係で、投資したいと思ってもなかなかできないのが実情である。そこで、あせって本来の基準よりも甘い基準での投資にGOサインを出すことがよく起こる。

 

立地はよくないが賃料が劇的に安い物件、逆に立地はよいが想定の賃料条件よりも高い物件、など様々。そこで、既存事業に自信があるトップほど、なんとかなるだろうというので妥協する。また、企業規模がそこそこになってくると、これまで自分で見て判断していたものが、報告だけで決定するという状態にもなってくる。これも危険が伴う。

 

例えば店舗系で出店意欲の旺盛な会社だと、出店専門部隊ができる。その部署の目標は、「成長のため毎年○○件、出店すること」。それが先行し、本来の基準値よりも甘い出店になる場合もたくさん見てきた。結局、妥協した物件は、後々、収益があがらず苦労する結果となる。

 

このように、既存事業には甘さがでるということをよく認識した上での投資判断が必要である。言い換えると、投資に妥協は許さないことである。もう1点、既存事業の投資回収目安について触れておこう。既存事業の投資回収は、業種によって大きな違いがでるし、その企業の業界における位置づけなどでも変わる。投資回収が10年というのも、安定している事業では、よくあること。

 

さらに病院やホテル・旅館など、施設回転率の問題から収益上限が決まっていながら、大きな投資が必要な業種は、投資回収20年超という計画もある。実際、過去にこの手の計画を何度となく目にしてきた。投資回収20年、売上は、3年目で施設の上限値に近いところに達し、その上限値に近い売上数値が15年にわたり続くというもの。それで、投資回収ができるという計画である。

 

果たして、これは成功するだろうか。確かに施設系は、投資5年くらいは、新しいということもあり、上限値でまわることも推測される。しかし、その間に競合の出現、時流の変化、施設の劣化、含め、様々なことが起こり、その上限値に近い数値で10年以上の長きにわたり続くと考える方がおかしい。再生に陥る企業によく見られる既存投資回収の計画である。

 

また、その投資による借入金は、20年となると代替わりした事業継承者にバトンタッチされる。そして、それらの人がその借入金で苦労している姿を何社も見てきた。やはり、投資は、自分の代で確実に回収できることを前提に実施すべきである。その投資への思いが違う人に、その負債を引継ぐことは、避けるべきである。

 

全ての経営は、現状を的確に認識(デューデリジェンス)し、未来に向けた“今の変革”からはじまる。

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