~デューデリから未来へ向けて~「中国におけるM&A現場から」Vol.18

現在、中国に進出していた日系企業の撤退にかかわるM&Aのご支援をしている。その会社はメーカーであり、一時期は、上海を中心に従業員を数百名雇用していたが、昨年に中国からは完全撤退。タイなど他のASEANエリアに製造拠点を移した。

 

中国は、撤退しても簡単に会社をしめることができない。また、その登記企業は、中国国内でも色々な権利を有しているため、その企業を中国向けに拡販していきたい企業に売却する支援である。その企業のトップになぜ、中国から完全撤退したのかをお聞きすると以下の答えが返ってきた。

 

「中国国内で製造業は、かなりの高付付加価値商品か、もしくは、正式な雇用契約をしない労働者コントロールをしない限り、なりたたなくなっている」というものであった。

 

もう少し詳細を下記に解説しておく。

 

その企業も5年ほど前までは、中国国内で高い利益を出していた。それが、おかしくなり始めたのが、2008年の「中華人民共和国労働契約法」の成立。これにより、何度か雇用契約を同一人物と更新すると、くびを切れない、労働争議もできるなどをうたった法律。これは、別に日本でも同じような法律で驚かない。

 

しかしなが、中国では、会社にこなくても本当に首をきれないという。中国には退職金がないかわり、首をきられると多大な保証金を請求できるため、わざと首をきってほしいというものも出てくる始末。そのため、完全に労働モラルが崩壊し、2012年には、人件費コストの上昇により完全に赤字転落。そこで、撤退を決めたという。

 

また、その間も根本的な賃金は上昇を続けている。データで追うと以下のようになる。1993年の上海における最低賃金は210元。これに対して2014年は1820元とこの20年間で約9倍。1元が約20円と計算すると、現在の月最低賃金は、約3.6万円。2009年の金融危機を除いて、ほぼ毎年10%程度の上昇を続けている。

 

これは最低賃金の話であり、平均賃金はこれより当然高い。2013年度では、上海の平均賃金は5,000元強、日本円にして約10万円。この調子でいけば、あと数年で日本の賃金水準を追い抜く勢いである。もともとが安い労働力をもとめて中国に出ていたのが、その機能を果たさなくなったということ。

 

それでは、現在、上海などで、製造業がないかというと当然、存在している。しかし、低い粗利の商品を製造しているところは、完全になりたたたない。成り立っている企業は、どうしているかというと、会社を一旦、廃業し、別の会社をつくる。そして、そこでは、労働者との契約をせず、日雇いで毎日払いを実施しているというのが実態という。

 

しかしながら、中国は、依然として、世界最大の需要マーケットである。このバランスをみながら、いかにビジネスを展開していくか、難しい時期に入っているという。

 

全ての経営は、現状を的確に認識(デューデリジェンス)し、未来に向けた“今の変革”からはじまる。

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