小規模M&A 過去の失敗から学ぶ

以前、コンサルティングでお手伝いしていた会社様(チェーン飲食店)が他社買収を手掛けます、というのでお手伝いしたことがあります。

内容としては、一事業部門をさほど大きくない金額で買収するというものでした。

調査かたがた店舗を見て回り、数字を確認したところ、問題らしい問題もなく、大丈夫なんではないかとの話になりました。

金融機関もプッシュしてくれて、M&Aは無事終了しました。

 

それから5年を経て、この案件はどうなったかといいますと、買収時点から落ちてはいませんが、伸びてもいないという結果になってしまいました。

 

理由はいくつかあります。

表面的には対象会社の幹部社員が親会社に融和せず、買収後数年を経ても親会社の姿勢に対して懐疑的なまま推移し、仕事が円滑に進まなかったというのもあります。

しかし、それ以上に大きかったのは店舗展開に対する考え方が全く異なったことです。

 

百貨店やショッピングセンターなどの大型商業施設に出店しているテナントは、定期的にリニューアルが実施される際に場所を移動してもらうようデベロッパーから依頼される場合が多くあります。

 

大型店内で移動する場合、売上はどうなるかといいますと、場所が移動することで売上が「上がる」場合のほうが多いのです。

なぜならば、もともとの顧客層に加えて、場所が移動することで開拓できる新しい顧客層が得られるからです。

大型商業施設の中を歩くお客様は、ほとんど同じルートしか歩かず、自分のルート上にない店は知らない、ということがとても多いのです。ですので、この親会社は基本方針として、店内移動を持ち掛けられたら協力的に動き、既存店の業績を伸ばしてきました。

 

ところが、買収された企業のほうは、この店内移動に断固反対して、各地のデベロッパーと対立し、店内移動を不服として撤退した過去が多数あったのです。

 

結果として、買収後に新規の出店を計画し、ターゲットリストに入る商業施設を検討しても「その店は過去に撤退した経緯がある」、という場所ばかりで、なかなか新規の出店がうまく進まない・・・という状況に陥ってしまいました。

 

出店エリアを広げれば対象は広がるとはいえ、管理上営業エリアをそこまで拡大できないという事情もあり、思うように出店が進まない状況が続き、対象会社の幹部社員も新しい会社内でパフォーマンスを発揮できないまま元気がなくなり、一人辞め二人辞め・・・という状況になってしまいました。

 

幸いなことに、親会社のほうの事業は安定的に発展し、企業グループとしては順調に発展させられたことで大きな問題にはなりませんでした。また、この対象会社もいまではなんとか再生の段取りをつけつつあります。

とはいえ、PMIに無駄に5年近くも費やしてしまったことになります。

 

小売店舗・飲食店舗のチェーンの場合には、このように過去に出店先とどのような関係性で事業を展開してきたのか、ということについて、より深く知っておく必要があったと、親会社も私どもも大いに反省させられる案件であったといえます。

 

買収後の成長のエンジンになる重要なポイントに関しては、基本合意前に十分にインタビュー等でしっかりと把握すべきだったいえます。

 

船井総合研究所

M&Aコンサルティング事業室

山本 匡(やまもと ただし)

メールマガジンの一覧へ
このメルマガの配信を希望する
事業承継・M&Aに関するお問合せをする